写真は4年前の11月、柳津駅で撮影した気仙沼線の気動車ですが(したがって、この写真は以前の記事からの転載となります)、この気動車が柳津の先、気仙沼まで再び走るということには、どうやらならないようです。
被災で不通のJR2区間、鉄路復旧を断念
2015年07月22日
東日本大震災で被災した岩手・宮城県のJR大船渡線と、宮城県のJR気仙沼線の不通区間について、JR東日本が鉄路復旧を断念する方針を固めたことが分かった。
不通区間で暫定運行しているバス高速輸送システム(BRT)を継続させる。24日に東京都内で開かれる「沿線自治体首長会議」で正式に提案する見通しだ。
関係者によると、JRはすでに沿線自治体に説明を始め、BRTの利便性などを強調しているという。
不通区間は、大船渡線が盛駅(岩手県大船渡市)―気仙沼駅(宮城県気仙沼市)間の43・7キロで、気仙沼線が気仙沼駅―柳津駅(宮城県登米市)間の55・3キロ。JRは代わりの輸送手段としてBRTを導入し、仮復旧させた。
(YOMIURI ONLINEより)
これは以前から言われていたことなんですが、災害復旧に関する国ないし自治体の補助の問題も絡んでいるとのことです。
どういうことかというと、JR東日本(JRE)はあくまで民間企業であり、しかも莫大な収益を上げている黒字企業であるから、そのような企業に復旧資金を国が拠出することは合理性がない、だから気仙沼線などの復旧には資金を拠出するわけにはいかない、ということです。同じように災害に遭った三陸鉄道が、復旧工事をなすことができたのは、岩手県の補正予算や国土交通省の第3次補正予算から復旧費用が拠出されることが決定したから。で、三陸鉄道に国や県の公金を拠出できたのは、同社が半官半民の第三セクターだから、という理由もありそうです。
他方、JREはJREで、気仙沼線は率直に言って鉄道路線としては「不採算路線」であり、BRT化によって収益性が改善されるならその方がいい、と考えている節もあったようです。だからこそ、BRT化によって気仙沼線が「仮復旧」しても、その後の鉄道としての「本復旧」には言を左右にし続けてきたのでしょうし。
ただ、現実問題として、鉄路の復旧にはJREは1100億円かかるとの試算結果を示していて、これでは到底企業としては無理であると述べています。確かに、費用対効果の面で言うならば、そりゃJREの言にも理があります。
むしろ、批判すべきなのは、災害復旧の資金拠出に対するアンバランスな対応ではないのでしょうかね? 鉄道は誰が経営しているのかを問わず、日本国民の福祉、国防のためには非常に重要なインフラです。この点の認識が、企業にも政治家にも官僚にも、抜け落ちてはいないでしょうか。何でもかんでも「国鉄民営化の弊害」に結び付ける気はありませんが、陸海空、特に道路と比べての鉄道に対する政治の冷遇ぶりは改められて然るべきかと思われます。
結局この問題は、単独では採算確保が難しい地方路線をいかに維持するか、地域の交通体系をどのように作っていくのかという、回答不能な難問に突き当たってしまうのです。現実にはBRTで利便性が確保されている以上、それでいいのかという気もしますが、本当にそれでいいのか。管理人には分かりません。
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※ 当記事は08/06付の投稿とします。