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2808.トワイライトエクスプレス廃止で懸念される「会社間跨り列車」の命運

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既に10日ほど前になるのですが、JR西日本から、大阪~札幌間を結ぶ寝台特急「トワイライトエクスプレス」が廃止になる旨のアナウンスがなされました(こちら)。


2008092608490000.jpg
この姿も見納め
(平成20年9月に金沢駅で撮影・以前の記事から転載)

このニュースは鉄道趣味界においても驚きをもって受け止められ、多くの鉄道趣味系ブログでも落胆の声が聞かれます。
管理人としては、この列車はかつての九州ブルトレのような「日常を運ぶ列車」ではなく、「乗ることそのものが目的の列車」であることから、この列車には全く興味がありません。したがって、この列車の運転を取りやめると聞いても、ああそうですか、くらいの受け止め方です。確かに、青函トンネルが新幹線との共用になって走行条件が厳しくなり、しかも金沢~直江津間の北陸線は第三セクター化されますので線路使用料の精算が面倒になること、加えて車両が製造後40年を経過し老朽化が顕著とあっては、むしろこれまで運行を継続してきたこと自体が奇跡であるとすらいえます。

というわけで、今回の記事はトワイライトエクスプレスの去就に関するものではありません。あくまでこの列車の話題は今回の記事の本題の「まくら」であり、本題はこの先にあります。

本題は、この列車のような「会社間跨り列車」は今後どうなるのかということです。

JR各社は以前の国鉄が昭和62(1987)年4月に分割・民営化されたものですが、それに先立つ前年の11月には国鉄として最後の全国規模でのダイヤ改正を実施し、民営化後の列車の体系を作っています。このとき国鉄が公式にアナウンスしていたのは、現在運行している長距離列車を会社の壁によって分断するようなことはしない、ということでした。確かにその後、ブルトレや長距離列車といった会社間跨り列車は、国鉄時代と同様に運行が続けられてきました。
しかし、それまでは同じ国鉄だったものが、別の会社ということになると、線路や車両の使用料が発生します。これが所謂「乗り入れに関する手数料」ですが、別会社である以上発生するのは当たり前。両者の車両が相互に乗り入れる相互乗り入れの形態であれば、車両のトータルの走行距離を同じにして相殺するという芸当が可能です。これはJR各社相互間の乗り入れについても変わりません。
ところが、末期の九州ブルトレのように乗車率が落ちてくると、乗り入れに関する手数料の支払いも馬鹿にならないレベルになってきます。加えて、他社乗り入れ列車は車両の置き換えもままならないことが多く、列車としての体質改善に遅れをとることが増えていきます。
そのようなことから、会社間跨り列車は廃止が相次ぎ、現在では新幹線・在来線とも、乗客の流動の大きなところか、運転上どうしても乗り入れが不可避な場合以外は、細々としたものになってしまっています。こうなると、全国のネットワークという、グループとしてのJRの強みを自分で捨ててしまっているのではないかという疑念が消えません。

そうなると、会社間跨り列車は、JR各社が独自性を強める方向にシフトしている以上、今後も減少していくことは変わらないだろう、と結論付けざるを得ません。

では、現在のような「JR各社が独自性を強める方向」は、果たして正しいのでしょうか。このような方向が、国鉄の分割とその後のJRの分立に起因するとすれば、「分割民営化」、とりわけ「分割」は果たして正しかったのか、という疑念に突き当たります。
管理人は、もとより「分割民営化」に関しては懐疑的でした。勿論、国鉄時代を懐かしむ単純なノスタルジアではなく、鉄道が日本国内における福祉と国防に役立つインフラであるところ、その役割を放棄してしまったのかと思えるからです。欧州諸国では、日本のように国有鉄道を完全に民営化した事例はありません。フランスは大赤字でも国営を維持していますし、スペインやドイツ、イタリアは列車の運営だけを民営化し、地上のインフラは国営を維持しています(上下分離方式)。これはまさに、このような鉄道の有用性を認めているからではないでしょうか? 勿論、国防にも福祉にも役立たない路線は、使命を終えたものとして廃止するのもやむを得ないでしょう。しかし、そうではない路線であれば、少なくともインフラの維持には公的な手助けが必要ではないでしょうか。加えて、どことは申しませんが、現在では独立経営が困難になっているJRの会社もあると聞きます。であればなおさら、あの「分割民営化」は果たして正しかったのか、再検証が必要ではないでしょうか。

「トワイライトエクスプレス」の問題は、長距離列車や寝台特急列車の将来性という問題であることは明らかですが、それよりも大きな問題、JRの分立や並行在来線の第三セクター化も含め、鉄道の事業主体を細分化することの是非の問題でもあると思います。

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※ 当記事は06/07付の投稿とします。


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