現在の埼玉西武ライオンズは、昭和53(1978)年まで本拠地を福岡に置いていました。その前の昭和47(1972)年のシーズンまでは、球団名は「西鉄ライオンズ」。泣く子も黙る野武士軍団として勇名を馳せたパリーグの雄でした。
その「ライオンズ」がかつて本拠地としていた福岡と、現在の本拠地である埼玉(といっても実際にはさいたま市ではなく所沢市だから、ちょっと苦しいのですが)を結ぶ、日本最長距離を走る夜行高速バスが、このたび運行を休止することとなりました。
日本最長の夜行高速バス「Lions Express」 運行休止
2015年4月10日(金)、西鉄天神高速バスターミナル(福岡市)と大宮営業所(さいたま市)を結び、走行距離が1152kmにもなる日本最長の高速バス「Lions Express(ライオンズエクスプレス)」が、5月16日(土)出発便を最後に運行を休止することが明らかになりました。
「Lions Express」は西日本鉄道グループの西鉄高速バス(福岡市)と、西武鉄道グループの西武観光バス(埼玉県所沢市)が共同で、2011年12月8日に1日1往復の運行を開始した夜行高速バス。途中、YCAT(横浜駅)、池袋駅東口、大宮駅西口を経由します。
西日本鉄道によるとこれまでビジネス客や観光、レジャー客を中心に約4万5000人がこの「Lions Express」を利用したといいますが、利用者数の伸び悩みから「これ以上の運行継続は難しい」と判断したそうです。
4月10日現在のダイヤは、上りが西鉄天神高速バスターミナル発17時35分、YCAT着6時57分、池袋駅東口着7時54分、終点の大宮営業所着は8時45分。下りが大宮営業所発17時35分、池袋東口発18時30分、横浜(YCAT)発19時40分、終点の西鉄天神高速バスターミナル着は8時55分。全区間の所要時間は15時間10分から20分です。
使用車両は4列シートで定員34名、トイレ付きで、運賃は日によって異なり大人片道8300円から12300円の設定。西鉄高速バスの車両には往年のプロ野球球団「西鉄ライオンズ」の、西武観光バスの車両には「埼玉西武ライオンズ」のデザインが描かれています。
(Yahoo!Japanニュースより)
・西鉄高速バスからのプレスリリースは → こちら
・西武観光バスからのプレスリリースは → こちら
(いずれもPDFファイルです)
やはり流石に、片道1200km近い路線の運行には無理がありましたか…。北米のグレイハウンドバスには、このくらいの距離の路線はざらで、もっと長距離の路線もゴロゴロあるらしいのですが、それは海外の事例なので、日本とは直接には比較できませんよね(^_^;)
当然、運行休止というからには、「儲からない路線」に成り下がってしまったわけですよね。
そうすると次に、それではなぜ、この路線がそうなってしまったのか、その理由が問題になります。これはやはり、LCC(格安航空)の普及が一番の要因かと思われます。関東圏発着のLCCの路線は成田発着となりますが(羽田は着陸料が高額だから、それを嫌って成田発着にしている)、その手間を差し引いても成田-福岡を片道1万円前後で飛べるのは大きな魅力です。この路線、シーズンによって変動しますが、運賃が最安で8300円(片道)、シーズンの最高値が12,300円(同)です。これと同じくらいの運賃で、成田からLCCに乗れるとしたら、どうでしょうね? 高速バスは長時間乗っていると、思いのほか体力を消耗するもので、それは特に夜行の場合に顕著です(管理人の実体験)。だとしたら、フライト時間そのものが短い飛行機の方を取るのではないでしょうか。
ましてこの「ライオンズエクスプレス」、東京-福岡間の「はかた号」のような横3列の豪華仕様ではなく、横4列のエコノミー仕様の車で運転されていました。横3列のゆったりした座席配置の車ならいざ知らず、横4列では短距離でも疲れるというのに、それが約1200km、所要時間15時間では、疲労感は計り知れないものがあります。まして、鉄道や船舶のように乗り物の中を自由に動けるのとは異なり、バスはそういうことができません。そのことも、肉体的・精神的疲労を助長させているところがあります。
それともう一つの要因として、運転手の勤務体系があると思われます。この距離では最低でも片道2人乗務でしょうが、その場合の疲労感は半端ではありません。かなり労働条件としては過酷だったのではないでしょうか。「過酷路線手当」なるものがあるのかどうか分かりませんが、もし仮にそういうのがあるとしたら、それは経費となって路線の運営に跳ね返ってしまいます。ということは、安い運賃を売りに集客をしたくても、おのずと限度があるということにもなります。まして、運営している2つの会社は、いずれも大手バス会社。運転手にそれなりの待遇をしようと思えば、あまり運賃をダンピングもできません。
さらに、最近ではガソリン価格の問題も指摘できようかと思われます。これも勿論、路線運営の経費として跳ね返ってきますから、やはり運賃値引きに対する反対要因となってしまいます。
結局、LCCに運賃面で太刀打ちできず、しかも安い運賃での集客にも限度があった。この路線が休止に追い込まれたのは、そういう理由があったのだと思われます。
ただ、今回の発表、「廃止」ではなく「休止」なんですよね。
ということは、GW後の夏休みなどにも期間を限って運行される可能性もあり、その点も注目されるところです。
この路線の専用車として、西鉄高速バスが旧西鉄ライオンズのロゴを、西武観光バスが現西武ライオンズのロゴを、それぞれ車体にデザインしていますが、そのデザインは見られなくなってしまうのでしょうか。
管理人も乗ってみたいとは思うのですが、体力的な不安がorz
※ ブログナンバーを投稿当初の№3084.から変更しました。
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3085.こちらの「地平を駈ける獅子」は休止へ~高速バス「Lions Express」運行休止
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