既に留萌本線留萌~増毛間の廃止(12月4日限り)を決定しているJR北海道。
その前後から、この会社の経営状況の苦しさが取り沙汰されるようになっていますが、いよいよ「非常ベル」が鳴り出してしまったようです。
JR北海道、維持困難線区を秋にも公表 地元と協議へ「経営極めて厳しい」 2016.7.29 20:42
厳しい経営が続くJR北海道は29日、赤字が大きく同社単独では維持するのが難しい線区の具体名を、秋にも公表すると発表した。自治体などが鉄道設備を保有して維持管理し、同社の負担を軽減する「上下分離方式」の導入やバスへの転換も選択肢に地元と協議し、事業の見直しを進める。
記者会見した同社の島田修社長は「経営状況は極めて厳しく、全ての路線を同様に維持しては、いずれ資金繰りの破綻は避けられない」と説明。「北海道では全国を上回るスピードで人口減少が進んでおり、持続可能な交通体系を早急に地域の皆さまと相談したい」と述べた。
(産経ニュースより)
国鉄がJRに改組して来年で30年、バブル経済という好景気の絶頂にあった当時とは違い、未だデフレの出口がやっとこさ見えてきた状況、しかも人口減少も進み、JRその他鉄道事業者を取り巻く環境は厳しさを増しています。以前に当ブログでは、JR西日本の三江線(江津~三次)について存廃が取り沙汰されているというニュースを取り上げたことがありますが(下記関連記事参照)、やはり沿線人口が少ない線区では存廃問題が浮上しています。
その「沿線人口が少ない」点においては、恐らく全国でも随一の北海道。少子高齢化・人口減少が進んでいる昨今のこと、経営が厳しさを増している点も容易に想像できました。
ただ、北海道には特有の事情があります。
それは、冬季の代替交通機関の確保。
冬季の北海道では路面の凍結による交通事故が多発し、地元ドライバーでも冬季の自動車の運転には躊躇することも多いと聞きます。それにより、北海道の列車は夏季よりも冬季の方が乗車率が高いこともあるのだとか。道内でも長距離の場合航空便がありますが、吹雪が酷くなれば空港は閉鎖になり欠航を余儀なくされます。というわけで、鉄道が最も雪に強い交通機関となっていて、それが北海道の鉄道の存在意義でもあるわけです。
しかしそれも、一民間企業に任せるのには限界が来ているということのようです。そこで今回、維持困難線区を公開して、地元自治体と話し合いの場を持ちたいということなのでしょうが、問題はその地元自治体にも潤沢な資金があるわけではないこと。勿論自治体も必要性については理解しているでしょうが、では資金的な援助はどうなんだとなると、やはり思うに任せないということになろうかと思います。
管理人は折に触れて述べていますが、鉄道には「福祉」「国防」の両面の必要性があると考えています。であるが故に、国のインフラとして国が責任を持って整備すべきだったとも考えています(現在でもフランスが大赤字なのに国営を止めないのはそれが理由と思われる)。
だとしたら、29年前の「分割・民営化」は、果たして正しかったのかという、根本的なところの検証は避けて通れないように思われます。民営化そのものは当時の組合問題を解決するために不可避であったとしても、所謂「上下分離」でよかったのではないかとか(ドイツ・スペイン・イタリアなどはこれ)、あるいは「持株会社」を認めて(JR分立当時持株会社は法律で認められていなかった)分立するJR各社を管掌させるとか、そういう「一体性」を保つような方策は撮っておくべきだったのではないかと。
今にして思うと悔やまれるのは、当時の国鉄の経営形態の論議の際に、「国防」の観点からの議論がなかったように思われることです。これも「泰平の眠り」、別名「平和ボケ」の真っただ中だったことが原因ですが、それが非常に勿体無かったと思います。
宗谷本線の名寄以北や根室本線の釧路以東が廃線にならないのは、国防上の理由だという話を聞いたことがありますが、それならなぜ、一国の国防の負担まで民間企業に負わせるのでしょうか? 一番いいのはインフラの国有化ではないかと思いますが…。
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※ 当記事で使用している写真は、以前の記事からの転載です。