-その5(№4618.)から続く-
今回と次回は、「183系ブラザーズ」の「改造車列伝」と参ります。ここでは、国鉄時代(一部JR東日本発足後)になされた改造車を取り上げます。
183系列にまつわる改造車は以下のとおり。
1 系列内改造車
クハ183-1500(1525~1532)
2 系列間改造車
全て183-1000から189系への改造。
モハ188・189-1500
クハ189(1016、1516)
サロ189(1107・1117、1505・1516)
3 他系列からの編入車
(1) 485系列→183系
① サロ481-0→サロ183-1050
② サハ489-0→クハ183-100(101・102)
③ サハ481-100→クハ183-100(103~105)
④ サハ489-0→クハ183-150(151・152)
⑤ サハ481-100→クハ182(1・2)
⑥ サハ481-100→クハ182(101~105)
(2) 485系列→189系
① モハ484・485→モハ188・189-500
② サロ481-0→サロ189-50
③ サハ481-100→クハ188(101・102)
④ サハ481-100→クハ188(601・602)
4 183系列から他系列への改造車
(1) サロ183-0→サロ110-300
(2) サロ183-1000→サロ110-1300
(3) 元485系のサロ(サロ183-1050)の原番号復帰
(4) サロ183-1050・サロ189-50→サハ481-300
(5) ジョイフルトレインへの改造車
非常に多岐にわたっていますが、車両需給の関係である点は共通しています。特に顕著なのが、485系列からの先頭車化改造車を多数迎え入れていること。これは、当時の国鉄で行われていた、編成単位を短くして運転本数を増やして列車の頻度を上げ、それによって利用しやすくするという施策が理由です。従来の183系列の編成は、9連の183-0を筆頭に、183-1000と189系が12連という大編成。それでは編成単位として過大すぎるということから、短編成化に舵が切られたのですが、勿論先頭車の数は全く足りません。
他方、当時の国鉄は財政が逼迫しており、新たな設備投資が抑制されていました。そのため、不足する先頭車は既存車両からの改造で賄うことになりました。この時期新造された183系列の先頭車は、クハ183-1500の完全新造車6両のみです。
順に見ていきましょう。
1 系列内改造車(改番を伴うもの)
これは前回取り上げた、クハ183-1000に総武快速地下線のATC装置搭載を行った、クハ183-1500の改造車6両が唯一の例となっています。
2 系列間改造車
これは、全ての例が183-1000から189系への改造となっています。
もともと、両系列の間には「183-1000+横軽協調機能=189系」という方程式が成り立っていますし、183-1000自体も補助機関車との協調運転こそできないものの、横軽自体は通過可能な構造になっていますから、189系への改造メニューも、補助機関車との協調運転に必要な引き通し関係の工事を施すのみの軽微なものになっています。当然のことながら、外観には殆ど変化がありません。
なお、モハユニットは原車号+500として区別されており、サロ189-1100は電動発電機(MG)を搭載したサロ189-100に相当し、サロ189-1500はそれを搭載しないサロ189-0に相当します。クハ189は、補助機関車と連結する麓側の先頭車を原車号+500として区別しました。
3 他系列からの編入車
これは全てが485系列からの改造で、189系に改造された電動車ユニット4組以外は、グリーン車と先頭車化改造車に集中しています。面白いのは、全てAU13(箱型クーラー)搭載の在来後期型で、AU12(キノコクーラー)搭載の初期型がないこと。これは183系列にAU12搭載の車が無いことが考慮されたのでしょうか?
これらのうち、最も早く登場したのはグリーン車の改造車で、昭和53(1978)年のこと。これは当時の車両需給事情が反映しています。当時は485系のグリーン車、それも1000番代ではない在来型が余剰気味だったので(当時九州の『有明』『にちりん』ではグリーン車の需要減少により、グリーン車を減車していた)、183系列のグリーン車の新造費用を抑制するため、485系(サロ481在来型)から7両編入しています。サロ183-1050はサロ183-1000に、サロ189-50はサロ189-0に、それぞれ相当します。
次いで落成したのが電動車ユニット。こちらは昭和57(1982)年に4ユニットが登場しました。この電動車ユニットは、先のグリーン車や後の先頭車化改造車とは異なり、かなり徹底した改造メニューとなりました。何と言っても、車体をほぼ新造してそれに485系由来の機器を取り付けたことが最大の特徴。そのため、外観からだけでは元485系の改造車とは分からない出来になっています。ただし座席だけは、種車の非リクライニングの回転クロスシートを転用していて、乗ってみて初めて出自が分かる車両でした。
先頭車化改造車は、昭和60(1985)年又はその翌年に落成したもので、全てがサハ481-100またはサハ489の改造となっています。これらの改造は、何と、種車の一方の端部を台枠ごと切り落とし、クハ183-1000と同様の非貫通の前面を、その切り落とした部分に接合するという、ある意味では非常に荒っぽい方法が取られました。このような荒っぽい方法が取られた理由は、やはりコストダウンの要請が一番の理由です。ただしクハ183-150の2両だけは、クハ481-300と同じ前面が接合されているため、オリジナルのクハや改造車よりも、車長がほんの少し長くなっています。
種車は車販準備室無しのサハ489又は車販準備室付きのサハ481-100ですが、後者からの改造車は、クハ182-0の2両だけが車販準備室を存置、その他の車両は全て車販準備室を潰して客室とし、定員の増加を図っています。
485系列改造の先頭車で面白かったのは、2ヶ所の客用扉の相違。運転台直後の客用扉は、183系列に準拠したステップが無い形態なのですが、反対側の連結面の客用扉は、種車のステップ付きのまま残されました。また、485系列も183系列同様、側面には電動方向幕を装備していましたが、485系列のそれは183系列とは制御系統が異なるため、種車のものは潰して使用停止とし、新たに窓上などに電動方向幕を設置しています。
このステップ付きの客用扉と、使用停止になった側面の電動方向幕、さらにそれらに加えて、床が高い故の客用窓の高さ、そしてそれに伴う窓周りの赤帯の段差は、元485系列の出自を雄弁に物語るものとして、鉄道趣味界でもかなり注目され、愛好家の格好の研究対象となったものです。
次回は、改造車列伝その2として、183系列から他系列への改造車を取り上げることにします。
-その7に続く-
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4624.特急大衆化の申し子~183・189系物語 その6 183・189系改造車列伝Ⅰ
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