-その12(№4660.)から続く-
平成9(1997)年の長野新幹線開業による「あさま」廃止。
平成14(2002)年の「あずさ」「かいじ」のE257系化完了。
平成16(2004)年から17(2005)年にかけての、房総特急からの撤退。
これらにより、全ての定期特急運用を失った183系ブラザーズ。
その後は臨時・波動用として活躍することになりますが、今回はそんな彼らの、特徴的な運用を取り上げていくことにします。
1. 臨時特急「あずさ」「かいじ」など
「あさま」廃止後も、長野には189系のモノクラス6連が数本残り、新幹線接続の快速「信越リレー妙高」(後に普通列車化され『妙高』と改称)、あるいは平成12(2000)~13(2001)年の一時期、特急「みのり」に使用されたことがありますが、この6連は臨時列車にも使用されてきました。
その中の白眉が臨時「あずさ」「かいじ」への充当でした。当初は市販の時刻表には何の記載もなかったのですが、その後「一般型特急車両で運転」との注意書きが付されるようになりました。この注意書きが付された列車は、定期「あずさ」「かいじ」とは異なりグリーン車の連結が無いので(定期列車には必ず連結されている)、鉄道愛好家であればこれらの列車に183系ブラザーズが充当されることは、容易に分かるようになっていました。
鉄道趣味界では、かつて見られた「あさま」カラーによる「あずさ」「かいじ」が見られるということで、189系による臨時列車は、特に「撮り鉄」といわれる撮影派の愛好家に人気を博しましたが、平成24(2012)年には同系編成の1本が国鉄特急カラーに変更され、しかもその編成が国鉄時代のままのイラストマークを掲出して走ったものですから、さらに愛好家の人気は沸騰しました。ただ、このころになると、先頭車の前面を飾っていた特急マーク(チャンピオンマーク)が取り外された車両もあり、カラーリングとイラストマークは国鉄時代のままであっても、何となく締まらない印象があったのも事実です。
なお、長野の189系とは別に、幕張のグリーン車入り183-1000が平成20(2008)年ころまで、時折臨時「あずさ」「かいじ」で走る姿が見られました。こちらは国鉄特急カラーを維持していたにもかかわらず、長野の189系とは異なり、あまり愛好家筋にはありがたがられなかったようです。当時は希少価値が無かったからでしょうか?
その他、大宮所属の国鉄特急カラーの183系が臨時「あずさ」「かいじ」に充当されたこともありますが、こちらは文字のみの「特急」というマークしか掲出されなかったことも多く、愛好家筋からは残念がる声もありました。
さらにこれらとは別に、横浜から横浜線を経由して甲府・松本へ至る特急「はまかいじ」も、長野の189系を使用して運転されていました。これは、ATCを搭載したクハ183-1000を両先頭に連結した編成が専用に使用されたものです。
2.「ムーンライトながら」とその関連列車
「ムーンライトながら」は所謂「大垣夜行」の後身として、平成8(1996)年からJR東海の373系を使用して運転されるようになった夜行快速列車ですが、「大垣夜行」時代から乗車率が非常に高かったため、多客期のニーズに応えるべく、全車自由席の臨時列車が運転されてきました。
「ムーンライトながら」運転開始直後は、臨時列車にはJR東日本の113系や165系、あるいはJR東海の113系などが使用されたものですが、平成15(2003)年に165系など急行型車両が退役すると、183・189系による運転に変更されます。それを機に、臨時列車も全席指定に変更され、「ムーンライトながら91・92号」となりました。
定期「ムーンライトながら」は、平成21(2009)年3月の全国ダイヤ改正で臨時列車に格下げされました。臨時列車化により、373系ではなく183・189系が充当されるようになっています。
臨時「ムーンライトながら」には、専ら田町の183・189系が充当されていましたが、その編成は当時の183系ブラザーズでは最長編成となっていた10連。往年の「とき」「あずさ」などには及ばないものの、国鉄特急カラーに身を包んだ長編成は、国鉄特急全盛期を彷彿させるものとして、鉄道趣味界での人気を博しました。
3.「ホリデー快速」など
JR東日本では、東京近郊で行楽客向けの臨時快速列車を多数運転しており、その中に183系ブラザーズを充当する列車も見られました。
中でも富士急行線に直通する「ホリデー快速河口湖」は、豊田の183-1000の6連が充当されましたが、臨時快速にもかかわらず専用の絵入りヘッドマークが用意されるなど、定期列車に準じた扱いを受けていました。
4.「彩野」
183系ブラザーズの中で最も手が加えられたのがこの編成。小山所属の189系のカラーリングを変更し、日光直通(東武直通ではない)の快速列車用に整備したのが始まりでした。その後、東武直通特急の予備車として使用すべく、東武用保安装置の搭載その他ハード面の対応は勿論、再度カラーリングを変更し、内外装のレストアをするなど、徹底的に手が入れられています。
とはいえ、乗り入れ相手の東武100系、自社の乗り入れ車両の485系改造車との接客設備の格差はいかんともしがたく、実際には485系の入場時などには東武から100系を借り入れて充当することになっていて、いわば「予備の予備」となっていました。それでも何度か、臨時「日光」などで東武に乗り入れたことがあります。
5.その他
その他としては団体臨時列車への充当があります。例えばお正月の成田山新勝寺への参拝客を集めた団体列車「成田臨」、甲子園大会出場校応援者による「甲子園臨」、さらには宗教関係の「天理臨」「金光臨」など。
このように、一時は団体・臨時列車用に活路を見出した183系ブラザーズですが、その後も勢力を縮小していきました。
まず東武直通特急用として253系が整備されたことで平成23(2011)年に「彩野」が退役、その2年後、運用に余裕の出た185系について団体・臨時列車用への転用が開始され、この年「はまかいじ」「ムーンライトながら」が185系に置き換えられています。さらに平成27(2015)年の北陸新幹線金沢開業により、189系の数少ない定期運用となっていた「妙高」が全廃、「ホリデー快速河口湖」も幕張のE257系に置き換えられてしまいました。団体臨時列車も、「成田臨」などは185系などに変更され、その他はJR他社に乗り入れるため、運転される機会も激減してしまいました。
現在、183系ブラザーズの定期運用は塩尻→長野の「おはようライナー」のみ、臨時運用を加えても「ムーンライト信州」くらいしかなくなってしまいました。既に183系ブラザーズは、長兄183-0も次兄183-1000もこの世になく、末弟189系のみになり、まさに「風前の灯」の体。今年は、189系登場から43年、長兄183-0登場から実に46年。いよいよ、183系ブラザーズの生涯にも幕が引かれようとしています。
次回は最終回として、183系ブラザーズの功罪を検証…と思いましたが、その前にやはり、183系ブラザーズとは血のつながっていない「外来種」、JR西日本の183系について、一応の言及をしておこうと思います。当初はあれに言及するつもりはなかったのですが、やはり素通りするのは画竜点睛を欠く気がしますので。
-その13に続く-