かつて副都心線開業と同時に行われたダイヤ改正で、東武東上線の特急が消えました。末期は土休日のみ、しかも僅少な本数での運転という細々としたものでしたが、それでも往年の「フライングトージョー」の流れを汲む由緒ある列車でした。
それから11年、今年3月のダイヤ改正で、東上線に「特急」が復活することになります。
3月16日(土) 東武東上線ダイヤ改正 東上線に新種別「川越特急」が誕生します(PDFファイル注意)
以下本文引用開始
東武鉄道(本社:東京都墨田区)では、2019年3月16日(土)に東武東上線においてダイヤ改正を 実施します。本ダイヤ改正では、観光へのお出かけに便利な時間帯を中心に特急料金不要の新種別「川越特急」 を設定し、池袋~川越間を最速26分で結ぶことで、東上線を代表する観光地 川越への利便性をさらに高め、 「川越観光=東武東上線」のイメージの深度化を図ります。
以上引用終了
(東武鉄道公式より)
遂に復活する
これは11年前の廃止間際のころの写真ですが、東武は「川越特急」を商標登録出願しているそうですので、もしかすると側面の表示はただの「特急」ではなく、「川越特急」になる可能性もあります。もっとも、商標登録していながら案内放送だけで車両や時刻表には表示しない、東急という会社もありますが…(東急は『東横特急』を商標登録している)。
そして注目される使用車両ですが、「TJライナー」で使用している50090系を使用し、それも「TJライナー」使用時と同様、座席をクロスシートモードにして充当するということです。
車内はこのようになる
50090系が「TJライナー」以外で車内をクロスシートモードにして列車に充当されるのは、「TJライナー」と運用が込みになった快速急行だけなので、「川越特急」はそれに続くものとなります。しかも「TJライナー」とは異なり川越特急は特別料金などを一切収受しないので、乗車券だけで乗ることができてしまいます。
そして注目される運転日及び運転本数ですが、土休日下り2本・上り4本、平日下り2本・上り3本と、土休日のみならず平日にも運転されることは特筆されます。さらに、自動放送で川越観光に関する案内を実施、た、一部の川越特急には観光案内などを実施するコンシェルジュが乗車するとのこと。要は案内係なのですが、コンシェルジュとアテンダントってどう違うんだろ(^_^;)
停車駅は、池袋・朝霞台・川越・川越市・坂戸・東松山~小川町間各駅とかなり絞り込まれていて、川越以遠も速達運転を行います。往年の特急のような、池袋~川越ノンストップも期待されましたが、流石にそういうわけにもいかないようです。しかし池袋~川越間の途中停車駅が、和光市でも志木でもなく朝霞台というのは驚きました。これはJR武蔵野線との連絡を意図したものでしょう。他方で和光市に停車させないのは、和光市で副都心線や有楽町線にお客を吸い出させないための戦略とも取れます。つまり「TJライナー」と同様、池袋から乗って欲しいという表れでもあります。
これまで東京~川越間のルートは、池袋からほぼまっすぐに向かうルートの東武東上線が最短であり、それ故に速達性に優れ、多くのお客を集めています。しかし、「TJライナー」以外は全てロングシート車での運転であり、かつ「TJライナー」は川越観光には無関係な列車であるため、快適性では有料特急を運転する西武、広域ネットワークが物を言うJRの間に挟まれ、東武のアドバンテージは速達性だけという状態が長く続いてきました。「川越特急」がロングシート車ではなく、50090系のクロスシートモードでの運転ということは、速達性のみならず快適性でも勝負に出ようということです。
さて、これで迎え撃つ形になった西武はどうなるのでしょうか。
西武も池袋からのアクセスでなければ、高田馬場乗り換えの利便性と特急「小江戸」による快適な移動にアドバンテージがありますが、001系「Laview」デビューと「拝島ライナー」運転開始に伴い、「小江戸」の存在意義がやや曖昧になりつつあります。ことによると、「小江戸」は近鉄の阪奈特急のように平日は朝晩のみの運転になってしまうか、「拝島ライナー」のようにライナー列車になる可能性もゼロではありません。まして西武の場合、所沢を回るルートで直線距離ではないので、時間がかかることは否めません。かつて平日のみ、高田馬場~所沢間で田無のみ停車の快速急行「川越号」を運転していたことがありますが、乗車率が振るわず急行に格下げされたのは、時間がかかることが敬遠されたのではないかと思われます。速達性では東武に勝つことは難しいので、「小江戸」の処遇をどうするかが焦点になるのでしょう。
ともあれ、いち愛好家としては、東上線に「特急」が復活することを、素直に喜びたいと思います。
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№533.さらば東上特急(関連記事も是非ご参照ください)
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