先ごろ車内販売を全廃した小田急に続き、東武も車内販売の廃止に舵を切りました。もっとも、東武の場合はコロナ禍もあって現在休止中だったものですが、それが正式に廃止になるに至ったものです。
以下引用開始
2021年08月16日
特急列車における車内販売営業の終了並びに飲料自動販売機の販売終了について
特急スペーシア・特急リバティにおける車内販売営業(新型コロナウイルス感染症のため現在は営業休止中)、並びに特急列車内の飲料自動販売機の販売は、2021年8月31日(火)をもって、サービスを終了させていただきます。
これに伴い、飲料自動販売機での販売については、2021年8月20日(金)から順次販売を終了いたします。
お客さまのご理解を賜りますようお願い申しあげます。長年にわたりご愛顧いただきまして、誠にありがとうございました。
なお、SL・DL大樹の車内販売については、引き続き車内販売営業をいたします。
引用終了
(東武大本営より)
車内販売を廃止するということは、この車両のビュッフェスペースが、完全なデッドスペースになってしまうことを意味します。
せっかくのビュッフェも無用の長物に
ビュッフェスペースが非営業化によりデッドスペースになった事例は、国鉄時代の電車急行にも見られましたが、こちらは自由席にあぶれたお客の救済スペース、あるいはスキーや登山などの大荷物を持ったお客の荷物スペースとして役立っていましたが、自由席のない「スペーシア」ではそうはいきません。あるいはこれが、「スペーシア」退役へのトリガーを引いてしまうのでしょうか。
そして「リバティ」の一部列車でも「売店営業」という形態で物販が行われていましたが、それもなくなります。
お客の要望で始まったはずなのに
もともと「リバティ」で車内販売が始まったのは、「『スペーシア』では車内販売があるのに、『リバティ』にないのはおかしい」という乗客のクレームが殺到したからというのが理由と聞いています。それでなくとも、「リバティ」仕様列車は特急料金割引サービス「夜割」「午後割」の対象外とされていて、にもかかわらず「スペーシア」よりもサービスが劣るのは怪しからん、ということでした。
しかしこれも、コロナ禍による乗客の激減により、立ち行かなくなったということなのでしょう。
そして伊勢崎線系統では、車内販売こそなかったものの、1800系の急行時代から、ソフトドリンクの自動販売機を搭載し、飲み物がほしいお客に対するサービスを供してきました。
それも今月20日から順次販売を終了するということです。
「りょうもう」の自販機サービスもなくなる
こちらはマンパワーが必要な車内販売とは異なり、継続してもよいのではないかと思いますが、やはり販売機自体のメンテナンスの問題と、商品の補充の問題があるのでしょう。
特に最近の「りょうもう」では、自販機の商品が売り切れであったり、故障中であったりして目当ての商品を買うことができないなど、そういう残念な機会に遭遇することで、車内の自販機があてにされなくなったという流れもあったようです。
これらに対し、「SL大樹」「DL大樹」は車内販売を継続するとのこと。いやらしい見方をすれば、これら「イベント列車」に乗車する乗客は、押しなべて財布の紐が緩むことから、それを狙えばまだまだ商売になるという判断でしょう。やはり列車内の供食・物販サービスは、新幹線のように圧倒的な乗客数があるか、あるいはイベント列車のような列車でしか成り立たなくなっているのかもしれません。
かつて国鉄で特急列車が増え、食堂車のない列車が増えたときには「エサなし特急」などと、鉄道趣味界で揶揄されたものです。そのころは、食堂車はなくとも車内販売は必ずあったものですが、最近は車内販売すら取り止める列車が増え、本当の意味の「エサなし特急」に成り下がってしまいました。そして大手私鉄でも、小田急に続き東武でも。
もっとも、車内販売の衰退は、コンビニエンスストアの爆発的な普及など、飲食物の調達チャンネルの多様化が一番の理由なので、趣味的な観点からの嘆きは格別、時代の流れとして受け止めるしかないのかと思います。
そうなると心配な点がひとつ。
数年前の中期計画で予告された「フラッグシップ特急」登場の暁には、この列車では車内販売が実施されるんでしょうかね?
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