冒頭の写真はいずれも以前の記事からの転載です。
大阪市湾岸部の夢洲地区では、所謂統合型リゾート(IR)の整備が計画されていて、大阪メトロではそのアクセスルートとして、中央線の夢洲地区への延伸工事を進めています。
そして大阪メトロ中央線は、近鉄けいはんな線と相互直通運転。
そこで、生駒駅から近鉄の既存路線への乗り入れを図れば、夢洲地区から奈良・京都・伊勢、さらには名古屋方面とも直結できるということで、近鉄では奈良線からのけいはんな線・大阪メトロ中央線への乗り入れ計画を進めています。
しかし。
そこでネックになるのが集電方式。
冒頭の写真の1枚目は大阪メトロ中央線弁天町駅ですが、こちらは相互直通運転を行うけいはんな線ともども、第三軌条集電。対して奈良線など近鉄の既存路線は架線集電。そこで、乗り入れのためには、その集電方式の壁を破る装備が必要となります。
勿論、原理的にはパンタグラフ装備車の台車に第三軌条に対応した集電靴を設ければ事足りる話で、現に英仏海峡トンネルを走る「ユーロスター」が採用していますから、その意味での技術的な問題はありません。問題は、集電靴をどうやって奈良線など既存路線の車両限界に収めるか。これができなければ、ホームなど構造物に支障してしまうからです。
そこで、かねてから近鉄は、車両限界に抵触しない集電装置の開発を進めてきましたが、このたび試作品が完成したとのことです。
夢洲直通列車向けの集電装置の開発について(近鉄大本営より・PDFファイル注意)
詳細はリンク先をご覧いただきたいのですが、要するに第三軌条集電を行う区間以外では、集電靴を畳んで車両限界内に収めるということです。
このような折り畳み式の場合、折り畳みを繰り返すことに関する耐久性が問題となりますが、今回のはあくまで試作品ということですから、今後テストが繰り返されることになるのでしょう。
ところで、けいはんな線・大阪メトロ中央線に乗り入れる車両、恐らく特急車両になると思われますが、その場合既存標準軌路線の特急車(例えばACEなど)よりも車幅・全長とも小さい車両となるはず。さすがにかつての18200系や18400系のような極端なことはないと思いますが、どのような車両になるのか、実車を早く見てみたい気もします。
かつて国鉄で、トンネル断面の小さい身延線について、第三軌条集電への変更を大真面目に検討したことがあるそうですが、もしそうなっていたら、近鉄より早く国鉄で、第三軌条集電区間と架線集電区間を行き来できる車両が出ていたような気がします。115系や165系、あるいは今の313系や373系の台車に集電靴が…いやいや、それはあくまで「歴史のif」。日本国内においては、実用化されれば近鉄が初の事例となります(国有鉄道の碓氷峠用ED42のような事例を除けば)。
最後に。
近鉄といえば、所謂「フリーゲージトレイン」を導入して標準軌路線と狭軌路線との直通運転を可能にするという話をぶち上げたことがありますが、あれ一体どうなっているんでしょうね?
その話題を取り上げた当ブログの記事を置いておきます。