以前の記事で、列車種別の事業者ごとの差異について取り上げたことがありますが、その記事では種別の優劣を取り上げました。
今回は、優等列車ではない所謂「各駅停車」について。
「各駅停車」に関しては、「各停」と表記する事業者と、「普通」と表記する事業者に分かれます。前者は東急・西武・小田急など関東私鉄に多く、後者は東武・阪急・京阪・近鉄など関西私鉄に多く見受けられます。
そのような中、南海は「普通」と「各停」が併存しています。大別すると、南海線系統の「各駅停車」が「普通」、高野線系統の「各駅停車」が「各停」と呼ばれます。
以下は、南海線の普通表示の難波行きと、高野線の各停表示の河内長野行き。2枚の写真を見比べていただくため、あえてノーキャプションとします。
いかがでしょうか。
これも以前の記事で取り上げましたが、南海線と高野線が難波~天下茶屋(正確には岸里玉出の手前)間で並走している区間に、今宮戎・萩ノ茶屋の2つの駅があります。これらの駅は、高野線にしかホームがなく、南海線の列車は全列車通過していきます。そのため、この2駅には高野線系統の「各駅停車」しか停車しないため、誤乗を防止する意味で、「普通」と「各停」を分けているようです。
国鉄~JRにも、中央線の高尾以遠へ直通する普通列車が、普通列車でありながら新宿~立川間ノンストップという例がありましたので(末期は三鷹にも停車していた)、その限りで「普通」と「各駅停車」が異なる種別である事例がありました。その他にも所謂「国電区間」と併走する東海道線や東北・高崎線の列車は、「普通列車」でありながら併走区間の快速のような役目を負っていますが、こちらは利用者には別路線と認識されているものと思われます。
したがって、現在の日本の鉄道では、この南海の事例が「普通」と「各停」という「各駅停車」の区別が、種別上の意味を持つ恐らく全国唯一の事例でしょう。
高野線系統の「各停」しか停車しない今宮戎駅
この南海の例と引き比べたとき、真っ先に頭に思い浮かぶのが、東急の大井町線です。
大井町線は5年前の平成21(2009)年に二子玉川-溝の口間が田園都市線に張り付く形で延伸されましたが、並行する田園都市線にはある二子新地・高津の両駅には、大井町線列車のホームがありません。そのため、大井町線の列車は二子玉川-溝の口間は原則としてノンストップです。
しかし。
「原則として」という言葉を使ったのには当然訳がありまして、何事も原則あるところ例外あり。本来はノンストップのはずの、二子新地・高津に停車する大井町線列車が存在するのです。
そのため、この列車と原則どおりノンストップの列車とどのように分けるか注目されたのですが、東急は両者とも「各停」とすることにし、原則どおりの列車を「緑各停」、二子新地・高津停車の列車を「青各停」と分けています。
以前に当ブログでも、大井町線は南海の例を見習って「普通」と「各停」で分けたらどうかという意見を述べたことがありますが(当時の記事は こちら)、南海の例と違って、同じ路線に「普通」と「各停」が併存するのは、かえってわかりにくいでしょうかね。
何気なく呼び習わしている列車の種別も、こうして見ると奥が深いですね。
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