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4312.キハ40系・888両のキセキ その15 最後のキハ40系はどこ?~将来を占う

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その14(№4307.)から続く

 

今年、JR各社は発足30周年を迎えました。その10年前に登場したキハ40系は、最後の新造車が世に出てからでも、35~40年の経年に達しています。

となれば、当然、キハ40系の置き換えが俎上に上ってもおかしくはないのですが、それではJR30周年の今年、キハ40系の残存率はどれほどのものだったのか。

以下に見てみましょう。

 

・JR北海道 81.5%(128/157)

・JR東日本 75.3%(165/219)

・JR東海 0%(0/59)

・JR西日本 98.9%(254/257)

・JR四国 49.1%(26/53)

・JR九州 100%(142/142)

旅客会社全体 80.6%(715/887)

(出典:『鉄道ファン』2017年7月号75頁『国鉄型車両両数比較表』)

 

国鉄からJR旅客会社6社に承継されたキハ40系の総数が887両なのは、JR発足前に事故廃車で1両が失われているからです。したがって、既に国鉄→JRへの改組の時点で「888両のキセキ」は失われていたことになります。じゃあなんでそんなタイトルを付けたんだよ、というお叱りもあるでしょうが、これは「キハ40系として生を受けた車両の両数」を前面に出したからです。

888両が世に出たキハ40系ですが、その事故廃車になった1両を除いた887両のうち、現在も現役なのは715両。残存率は80.6%と、およそ5両に4両が残存していることになります。ただし旅客会社ごとの残存率には当然差があり、残存率が低いのは淘汰を完了し0%となっているJR東海だけで、JR四国も全旅客会社の中では低いものの、それでも50%近い残存率となっています。逆に1両も減っていないのがJR九州(実は事故廃車で2両マイナス、JR四国から観光列車への改造種車として2両を購入したので2両プラス、それで差し引きゼロ)、殆ど減っていないのはJR西日本です。JR東日本の残存率がおよそ4分の3の75%台なのは、多いと見るか少ないと見るか。新車投入に積極的なJR東日本にしては多い、と管理人は思います。

このように、JR全体で見ても残存率が高い理由は、特に両運転台のキハ40について言えますが、単行運転で事足りる程度の輸送密度しかない路線が主な働き場所だからではないか、と指摘するのは、強引すぎるでしょうか。このような路線は、誤解を恐れずに言えば不採算路線なので、そこには積極的な設備投資が憚られ、そのために国鉄型気動車を長いこと使ってきた、とも言えます。

それなら、JR発足後に新しい気動車の投入が行われていて、キハ40系が置き換えられていないのは何故だという反論がありましょうが(JR東日本のキハ100・110系、JR西日本のキハ120など)、これら新型気動車が置き換えたのは、実はキハ40系ではなく、その1世代あるいは2世代前の、キハ52やキハ58系。これら新型気動車が投入されても、勾配が少ない平坦な路線では、相変わらずキハ40系が重用されてきました。それゆえに、これまで(JR東海とJR四国を除いては)キハ40系が劇的に減少する理由がなかったわけです。

 

しかし、そのような状況も、遂に終わりを告げるときがやってくるのかもしれません。

既にJR東日本は、来年3月に実施されるダイヤ改正において、新型気動車キハE130によって八戸線の全列車を置き換える旨をアナウンスしていますし、同じころには新潟地区に、キハ40系の置き換えをターゲットにした、新型電気式気動車GV-E400の量産先行車を投入することになっています。ハイブリッド車ではない純然たる電気式気動車は、昭和28(1953)年のキハ44200系以来実に65年ぶりとなりますが、勿論内容は当時とは大幅に異なり、ディーゼルエンジンを回して発電させるのは同じですが、そこから先はVVVFインバーターで三相交流を作り誘導電動機を駆動するというものです。これは、電車の技術を応用できコストダウンにつなげられる、車体をステンレスなどで軽く作れば単位重量当たりの出力を上げることもできる、などのメリットがありますが、最大のメリットは恐らく、ディーゼルエンジンを車両の駆動系と切り離し、運動エネルギーを直に車輪に伝えずいったん電気エネルギーに変換することで、構造の複雑な推進軸・減速機の脱落・折損のリスクから逃れられること。液体式気動車はディーゼルエンジンの運動エネルギーを直に車輪に伝える構造となっているため、その伝えるための推進軸・減速機の脱落・折損のリスクがあり、実際にJR北海道でそのことに起因すると思われる事故(石勝線特急列車脱線(火災)事故。この事故は、運輸安全委員会がまとめた事故報告書によれば、減速機を固定していた吊りピンが脱落、これが脱線・火災の原因になったとされている)も発生しています。

だからなのか、JR北海道でのキハ40系の代替車は、H100形(愛称『DECMO(デクモ)』)なる電気式気動車となりました。H100形は、JR東日本のGV-E400(両運転台仕様)との共通設計で耐寒耐雪機能を強化した仕様となりますが、現車は来年2月ころに投入されるようです。

ただ、やはりこれは電気式気動車の宿命なのか、重量がキハ40よりも重いという問題があるようで(川崎重工の構内を撮影したTwitterアカウントによれば、GV-E400の重量は42.3tであり、キハ40-2000よりも5tくらい重いらしい)、保線などのメンテナンスは大丈夫なのでしょうか。

これらの車両が増加すれば、JR東日本・北海道の両社では、それだけキハ40系が減少していくことにもなります。

 

では他のJRではどうなのか?

西日本や九州においては、既に機関を換装された車両が大半となっていることから、車齢は事実上リセットされていると思われますので、耐用年数(物理的寿命)はまだまだあると思われます。しかし、三江線廃止などを見るまでもなく、西日本・九州エリアにも経営環境の厳しい路線があり、それらが存廃の淵に立たされている場合もあることから、もしかすると、代替車が製造されないのに廃車が進行するという事態にもなりかねないように思われます。

四国においては、既に予讃線が伊予市まで電化され、土讃線でも新型に置き換えられた結果、同地でのキハ40系の活躍は徳島地区に限られています。現在、JR四国も経営が厳しいため、代替用新型気動車の投入もなかなか難しい状態にあり、しばらくはこの状況が続くものと思われます。

 

以上をまとめると、北海道・東日本ではこれから激減、西日本・四国・九州では現状維持か漸減となるのではないかと思われます。ということは、最後のキハ40系は、この3社のどれかになるだろうと思われます。

キハ40系は、JR各社が国鉄から承継した数多の車両、特に485系などとは全く異なる、地味な役回りの車両ではありますが、功罪相半ばしながらも、ローカル線の輸送改善の立役者であったことは、まぎれもない事実です。

その功績を讃えつつ、終わりにしたいと思います。長々とお付き合いいただき、ありがとうございました。

 

-完-


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