ちはら台から1駅、千葉中央側に折り返したおゆみ野駅。
ここは「おゆみ野ニュータウン」の拠点駅となっている場所ですが、やはりJRにスピードでは太刀打ちできないことや、千原線の運賃が高額であることなどで、千原線の利用は依然として伸び悩んでいます。
拠点駅にしては…と思うのが、この駅が1面1線の駅であること。
上りホームは一応あるのだが
開業時から複線化に対応した駅構造になっているものの、開業以来上りホームは使用されたことがありません。そのため、上りホームは開業後四半世紀近く経過した今もなお(※)、コンクリの打ちっぱなしのままとなっています。
※ 現千原線は平成4(1992)年に千葉中央-大森台間が開業し、その3年後にちはら台まで延伸開業している。おゆみ野駅は、そのちはら台延伸開業時に開業した駅。
使われていないホームに立つ駅名標が物悲しい
手前の「生きているホーム」と比べると、そのわびしさは際立っています。
さて、この駅は管理人が12年前に訪れ、駅前にロータリーがあるのにタクシーの待機すらなく、タクシー会社と直結した呼び出し専用の電話機が置いてあったものです。当時、開設から間がない当ブログでも、そのあたりの顛末を取り上げたものですが(下記関連記事参照)、12年後の今(今年10月11日)に行ってみたら、流石にそのような状態は解消されておりました。
待機するタクシーがいた
写真には1台が写っているだけですが、もう1台が写真の外に停車中でした。つまり2台が待っていたわけで、当時に比べれば状況は飛躍的に改善されています。
しかし、駅前にコンビニすらないのは、当時と変わりません。写真の左端の道を千原線の高架と反対側に行けば、セブンイレブンがあるようですから(一応は徒歩圏内)、当時よりはマシになったといえますが。
他方、当時には恐らくなかったものも出現しました。
それがこちらの、東京駅八重洲口・銀座数寄屋橋行きの高速バスの乗り場。
時刻表から見て、明らかにこのエリアの通勤・通学・買い物・用務の需要をターゲットにしていることが分かります。なぜかというと、反対側のダイヤ、つまり東京地区からこちらに帰る便は、午後~夜間に集中しているからです(平和交通株式会社の該当ページ)。
ちなみに、運賃はおゆみ野・ちはら台~東京駅八重洲口・銀座数寄屋橋間が1300円(現金の場合。ICカードだと1割引きの1170円になる)ということですから、運賃の面では京成利用と十分勝負になります。しかもバスであれば、地べたで乗り降りでき、必ず座席が確保されますから、その点でもメリットがあります。
これでは、京成、千原線を利用する人が少ないのも、無理からぬことだと思えてきます。おゆみ野ニュータウンは、それなりの人口があるはずなのですが、にもかかわらずこの惨状は…と思います。
さて次に、それではこのあたりの住人が千葉や東京に出るときは、高速バスか自家用車を使うのかといえば、そういうわけでもないようで。
小湊鉄道のバス停
実はおゆみ野駅は、JR外房線の鎌取駅とは3kmくらいしか離れておらず、そのためかおゆみ野ニュータウンの住人たちは、高額で利便性も劣る千原線を嫌って、JR外房線を利用することが多いということです。JRであれば東京都心部へも京葉線・総武快速線と複数のアクセスルートがあり、しかも双方へ直通列車がありますので、京成とは利便性で勝負になりません。そのため、平日朝晩の鎌取駅は大変な混雑を呈するとのこと。
鎌取駅とおゆみ野・ちはら台間を結ぶバス路線は、平日日中でも1時間当たり最低2本はあり、かなり利便性は高くなっています。JRを利用する人が多いから、この路線バスの利便性が高いのか、この路線バスの利便性が高いからJRを利用する人が多いのか、それは分かりませんが、京成千原線が積極的に選択されていないのは、悲しいことですが事実と言わざるを得ません。
実は前回の記事で述べた、「千原線の利用が振るわない理由はもう一つある」の、そのもう一つの理由がこれです。
管理人は実際に、おゆみ野駅1425発の鎌取駅行き小湊鉄道バスに乗りましたが、確かにおゆみ野から鎌取駅まではそれほど距離があるわけではなく、運賃も対距離制でありながら210円(だったと思う)と、思っていたよりも安く上がりました。
思ったこと。
京成が千原線の利用者を増やすのは、かなり難しいのではないかと思わざるを得ません。都営浅草線直通の速達列車でもあって、JRと比肩するほどの利便性の高さがあればあるいは…とも思いますが、千原線とつながる千葉線では、緩急接続の可能な駅がないなど、路線インフラが貧弱なのが難点で、思い切った速達列車の運行は困難となっています。
それなら運賃面でのアドバンテージが…とも思いますが、運賃値下げなどをすると、千原線の建設費が償却できないという別の問題が生じてしまいます。実際に日本共産党の千葉県議会議員は、そのような働きかけをしているそうなのですが、やはり私企業の経済活動ですから、地方自治とはいえ行政が容喙するのはある意味で邪道であり、この点は評価が分かれるところだろうと思います。
残念ですが、現状維持しかないのだろうかと結論付けざるを得ません。
管理人はこのあと、JR鎌取駅から、もうひとつの「ちばの鉄道の遺跡」を目指します。
◇関連記事
№2069.神鉄乗り歩き(前編)~ニュータウンの鉄道と新型車両
№4371.降りたことがある駅(成田スカイアクセス線・京成支線編)
※ 当記事は10/19付の投稿とします。