既に長津田見聞録の中で言及していますが、去る1月7日、東急は鉄軌道旅客運賃の改定申請を行うことを明らかにしたところ、その補足説明資料(PDFファイル注意)の中に、大井町線用車両の置き換えに関する言及がありました。これは、同線各停用の9000系・9020系をターゲットにしていることが明らかであることから、「9000系の退役のフラグが立った」ということで、鉄道趣味界が騒然となりました。
勿論、管理人も「マジかよ!」と思ったことは言うまでもありません。
というわけで、1月9日、溝の口・大岡山の両駅で、9000系・9020系を記録すべく撮影してきました。
まずは9020系から。
9021F
9020系(元2000系)は、1両あたり4台ある屋根上のクーラーが2台ずつ寄せられて設置されていることで、9000系と見分けがつきます。9000系は4台が分散して設置されていますので。かつては車外スピーカーの有無が両者を見分けるポイントだったのですが(2000系が本設であるのに対し9000系は準備工事だった)、現在では9000系にも本設されていますから、そこは区別がつかなくなりました。
こちらは9023F。
9023F
9023Fは両先頭車が元2003・2103で、デビュー当初は東横線も走りました。またこの両先頭車の編成(旧2003F)は、東急の車両で初めて行先表示器にLEDを搭載した車両でもあります。
それにしても、9020系の第2編成である9022Fは、ここしばらくの間長津田に留置されていますが、再起はあるんでしょうか。あるいは再起しないまま退役するのか。
以上は9020系ですが、以下は9000系。
9000系は全15編成が製造され、9007Fが5連で大井町線に直接投入された他は、8連で東横線に投入されました。当初は「都心線」(旧目蒲線の運転系統変更前の仮称)から南北線・都営三田線乗り入れに使用される目的であったようですが、その任は3000系が務めることになりました。それでは東横線からの副都心線乗入れの任に就くのかと思いきやそれもなく、平成21(2009)年から中間車を抜いて大井町線へ転属するようになり、平成25(2013)年3月の東横線と副都心線との相互直通運転開始の直前、最後まで残った9001Fが運用を離脱、大井町線へ転属、これにより全15編成が大井町線に集結しました。
以下、撮影順ではなく車号順に写真をアップして参ります。まずは9007Fから。
9007F
大半が8連で東横線に投入された9000系ですが、どういうわけかこの1本だけ、5連で大井町線に投入されました。また現在では先頭車にスカートを装備していますが、東横線所属編成が大井町線転属までにスカートの取り付けが済んでいたのに対し、この編成だけはかなり後年までスカートが取り付けられないままでした。
9008F
この編成から9013Fまでが3次車となります。3次車は1・2次車とは外板などの構造が変更されていますが、見た目での差異はそれほど大きくはありません。
9010F
こちらも3次車。
9014F
この編成は4次車。平成元(1989)年度の導入です。
9015F
9000系のラストナンバーにして、5次車。この編成だけ、9014Fに2年遅れた平成3(1991)年3月の導入となりました。もっとも、導入年度は前年度の平成2年度となります。この編成の導入で、9000系は全117両全てが出揃いました。
9000系・9020系の導入は、管理人にとってはついこの間のような気がするのですが、最初の9001Fの導入が36年前の昭和61(1986)年ですから既に36年が経過し、干支が3周していますし、最後の9015Fの導入からでも30年以上が経過しています。9020系にしても、平成4(1992)年から翌年にかけての導入で、こちらも30年近い月日が経過しています。
勿論、車体だけであれば、30年以上の経年など何のその、まだまだ使用に耐えるでしょう。しかし問題は制御装置。9000系・9020系は、既にVVVFインバーター制御としては旧式に成り下がったGTOサイリスタを使用しており、予備部品の枯渇の問題、さらには半導体の劣化の問題が懸念されます。それと最近のVVVFインバーター制御では、さらにエネルギー効率が上がっており、消費電力量の減少が図られています。電力消費量を抑えるという観点からは、いくらVVVFインバーター制御といえども、旧式に成り下がった方式をいつまでも使うわけにはいきません。それらの点を踏まえての置き換えという経営判断と思われます。
それでも、趣味的に見れば、9000系・9020系の退役は「桜木町を知る最後の世代」の完全消滅であり、「昭和の東急」の電車の設計理念(通勤電車には余分な装飾は不要であり、先頭形状は切妻を旨とすべしとする考え方)を反映した最後の世代の退役であるということで、東急の車両史の中では大きな区切りとなります。これは管理人の勝手な考えですが、9000系・9020系の退役は、かつての戦前型三兄弟(デハ3450・3500・3650)の退役に匹敵するような、大きな歴史の転換点になると思っています。
今のところ、まだ9000系・9020系の周囲は静かなようですから、今のうちにぼちぼちと記録をしていきたいと思います。