今回は前回に続き「改造車列伝」の第2弾ですが、今回は前回で取り上げきれなかった、183系列から他系列への改造車を取り上げることにいたします。
4 他系列への改造車
(1) サロ183-0→サロ110-300
昭和58(1983)年に初めて登場し、当時の鉄道趣味界を驚愕させた、特急型グリーン車の近郊型格下げ。これは、元181系のサロの改造に端を発するものですが(サロ110-301)、後に余剰となったサロ481やサロ183なども種車となり(サロ110-350・サロ110-1350)、鉄道愛好家から「化けサロ」というあだ名を頂戴するようになりました(余談ですが、『化けサロ』で検索すると、当ブログのこちらの記事が出て参ります)。
改造の目的は、老朽化していたサロ110・111の取り換え。特にサロ110は元153系であり、本来の113系よりも車齢が高く、老朽化が深刻だったからです。
サロ183-0改造のサロ110-300は304~311の8両で、改造メニューは客用扉の増設、引き通しの変更、開閉可能窓の増設、カラーリングの変更(特急カラーから湘南色へ)などで、301~303と同様、便所・洗面所はありません。
改造初年度は昭和62(1987)年度で、304~307は国鉄時代に、308~311はJR東日本発足後にそれぞれ落成しています。
種車になったサロ183-0は、次回に取り上げる「しおさい」「あやめ」の編成変更によるグリーン車の不連結により、余剰となった車両の有効活用でした。
しかし、これら「化けサロ」は、腰掛の取り換えは行われず(モケット張替えのみ)、特急時代のままで居住性は抜群だったのですが、座席定員が少ないという問題がありました。これは閑散時にはともかく、ラッシュ時にはかなり不評を買っています。当時はバブルと呼ばれる経済の絶頂期だったため、グリーン車の通勤需要も高く、グリーン車の定員増は喫緊の課題となりました。
これら「化けサロ」は、2階建てグリーン車の導入により順次淘汰が開始され、元サロ183-0のサロ110-300も、平成8(1996)年から10(1998)年にかけて全車が退役しました。「化けサロ」の中では、最後まで使われていた車両といえます。特急時代にさほど苛酷な運用が無かったことで、酷使による老朽化のダメージが小さかったからだろうと思われます。
(2) サロ183-1000→サロ110-1300
前項と同じ目的で5両が改造された車両で、こちらは種車が0番代ではなく1000番代となっているところが異なります。車号の1300から分かるとおり、総武地下線対応となっており、そのため用途も総武快速~横須賀線用として、カラーリングはスカ色とされました。
その他の改造メニューは前項と同じです。
こちらも改造初年度は昭和62年度で、最初の4両が国鉄時代に、最後の1両がJR東日本発足後に落成しました。
こちらの種車は、元「とき」用だったサロ183-1000。当初「すいごう」に連結すべく新潟から幕張へ転属してきた車両ですが、総武地下線の走行性能の問題とグリーン車の利用率の問題で連結が見送られ、幕張で長期間放置プレイをされていたもの。したがって、サロ110-1300は、幕張で放置プレイされていたサロ183-1000を有効活用したものです。なお、この5両は、「すいごう」へのグリーン車の不連結が確定した後、碓氷峠を自力で上り下りできる「国鉄版ズームカー」こと187系の改造種車として確保されていた車両でもあり、この5両が改造されたのは、187系の計画が完全に潰えたからでもあります。
こちらも平成10年までに退役していますが、やはり「化けサロ」の中では、最後まで使われた車両といえます。
(3) サロ183-1050の485系への復元・原番号復帰
昭和63(1988)年、当時新潟支社で担当していた特急「白鳥」「雷鳥」などのグレードアップ改造を実施することになり、グリーン車には当時遊休状態にあったサロ183-1052・1053を活用することにしました。これにより、この2両は485系に復元改造されるとともに、サロ481時代の原番号(サロ183-1052→サロ481-98、サロ183-1053→サロ481-112)にそれぞれ復帰しました。
この2両は、平成12(2000)年から翌年にかけて廃車されました。
この2両、485系から183系に編入され、今度は485系に復帰するという複雑な経歴をたどっていますが、次項で取り上げるサハ481-300への改造車とともに、もともと183系列との血縁関係は全くありません。その意味で、こちらで取り上げる意味がどれほどあるのかという疑問はなくはないですが。
(4) サロ183-1050→サハ481-300
前項の元サロ481のサロ183-1050のうち現車号に復帰しなかった1051と1054、同じく元サロ481のサロ189-50の全車(3両)を、平成元(1989)年に485系に復帰させ、かつ普通車格下げを行った車両。
サハ481-300には3種類あり、サロ481から直に格下げされた3両(301~303)と、元サロ183-1050の2両、さらに元サロ189-50の3両があります。元サロ183-1050の2両はサハ481-304と305に、元サロ189-50の3両はサハ481-306~308となっています。
いずれもE653系投入に伴い、平成10(1998)~12(2000)年に廃車されました。
こちらも、普通車格下げとはなっているものの、前項と同様に485系に「出戻った」車両といえます。
(5) ジョイフルトレインへの改造車
JR東日本では、新潟・水戸の両支社に非電化区間にも機関車牽引により入線可能なジョイフルトレインを平成3(1991)年に導入しています。前者が「シルフィード」、後者が「リゾートエクスプレスゆう」ですが、種車としてサロ183-1000とサロ189が選ばれています。
ただし、いずれも車体は完全新造であり、流用した機器は僅かで、単に改造名義となっているに過ぎない車両と断じても過言ではありません。よって、これらを183系列一族の範疇に加えるのは流石に無理があると思われますので、詳述はしません。
なお、「シルフィード」は平成13(2001)年に、内装をそのままに普通車に格下げされ「NO.DO.KA」と改称され運用が続けられてきたものの、昨年惜しまれつつ退役しています。また「リゾートエクスプレスゆう」は当初の欧風の内装を平成10(1998)年に和風(お座敷)に改めましたが、今年9月に長野に回送されました。こちらも廃車を前提としたものと思われます。
183系列の「改造車列伝」は以上となります。
なお、前回と今回においては、形式・車号の変更を伴わない改造は取り上げていませんし、後年実施された「あずさ」「あさま」のグレードアップ改造車に関しては、予告編で触れているとおり、改めて取り上げることにいたします。何とぞご了承ください。
次回は、「特別急行」から「特別」の冠が外された、昭和60(1985)年3月のダイヤ改正にまつわる、183系ブラザーズの話題を取り上げます。
-その8へ続く-